大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成10年(行ケ)226号 判決

兵庫県西宮市鞍掛町6番20号

原告

辰馬本家酒造株式会社

代表者代表取締役

辰馬章夫

訴訟代理人弁理士

網野誠

網野友康

初瀬俊哉

大分市弁天2丁目2番5号

被告

株式会社草本商店

代表者代表取締役

草本玉喜

主文

特許庁が、平成5年審判第12958号事件について、平成10年6月8日にした審決中、「その余の指定商品についての審判請求は、成り立たない。」とした部分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  原告の求めた判決

主文と同旨

第2  原告の主張

1  特許庁における手続の経緯

被告は、別添審決書写し別紙(1)のとおり、「白鹿」の文字を縦書きしてなり、第33類「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の区分による。以下同じ。)を指定商品とする登録第2057466号商標(昭和60年10月24日登録出願、昭和63年6月24日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

原告は、被告を被請求人として、本件商標につき登録無効の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成5年審判第12958号事件として審理したうえ、平成10年6月8日、「登録第2057466号商標の指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」についての登録を無効とする。その余の指定商品についての審判請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、平成10年6月29日、原告に送達された。

2  審決の理由

審決は、別添審決書写し記載のとおり、被請求人が「白鹿」の文字を書してなる本件商標を、その指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」について使用した場合には、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、本件商標の指定商品中の「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」については、商標法4条1項15号(平成3年法律第65号による改正前のもの、以下同じ。)に違反して登録されたものであるので、同法46条1項1号により、その登録を無効とすべきであるが、本件指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」以外の指定商品については、前記法条を適用するに足る証拠を見出せないから、その登録を無効とすることはできないし、本件商標が直ちに公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものとも認めることができないから、本件商標が商標法4条1項7号に該当するともいえないとした。

3  取消事由の要点

審決は、本件商標が商標法46条1項の規定により無効とすることはできないと誤って判断しているので、違法として取り消されるべきである。

(1)  商標「白鹿」は、「白鹿」の文字が原告により長年にわたって商品「清酒」に使用されてきた結果、原告の業務に係る商品「清酒」を示す極めて著名な商標となっており、また、原告を中核とする「白鹿グループ」が、多角的に事業展開している現状のもと、他人が「清酒」はもとより、「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」以外の商品について「白鹿」を使用しても、その商品が、原告又は原告の関連会社の製造販売に係るものであるかのように取引者・需要者に認識され、出所の混同を招くおそれがある。

少なくも食料品の分野においては、別添審決書写し別紙(2)のとおり、「白鹿」の文字を縦書きしてなる登録第2103676号商標(甲第8号証の1)について、3件の防護標章登録がされていることが、これを裏付けるものであり、特許庁においても、「白鹿」の文字が原告の業務を表わす著名商標であることが認定されている(甲第11~第14号証)。

一方、本件商標は、別添審決書写し別紙(1)のとおり、「白鹿」の文字よりなり、原告の著名商標と同一又は要部を共通にするものであることが明らかである。また、本件商標の指定商品第33類中「穀物、豆、粉類」はもとより、「飼料、種子類、その他の植物及び動物で他の類に属しないもの」も、清酒や他の酒類の原材料や副産物等として、清酒とは密接な関連を有する商品が多い。

よって、本件商標を付した指定商品中、審決が認める商品以外の商品についても、それらが取引に供される場合には、取引者・需要者は、その商品を原告又は原告の関連会社の製造販売に係るものであるかのように、その出所を混同するおそれがある。

したがって、本件商標は、その指定商品すべてとの関係において、原告の所有する著名商標「白鹿」と出所の混同を生ずるおそれがあるから、商標法4条1項15号に該当する。

(2)  前述のような、原告の所有に係る著名商標「白鹿」の存在を前提とすると、本件商標を使用する行為は、高級清酒を表象する「白鹿ブランド」のイメージと信用に只乗りして取引者・需要者を欺瞞し、利益をあげようとする不正な競争行為に当たる。このような行為は、健全な競業秩序の維持発展という商標法の目的に反するものであるから、商標法4条1項7号に該当する。

第3  当裁判所の判断

1  被告は、適式の呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。

したがって、前示原告の主張1及び2の事実と、原告の主張3の取消事由のうち、「白鹿」の文字が、原告の業務に係る商品「清酒」を示す著名な商標となっていること、原告を中核とする「白鹿グループ」が、多角的に事業展開をしていること、本件商標の指定商品中の「飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」も、清酒や他の酒類の原材料や副産物等として、清酒とは密接な関連を有する商品が多いことは、いずれも明らかに争わないものとして自白したものとみなす。

そして、本件商標は、原告の上記著名商標と同一又は要部を共通にするものであるところ、本件商標と引用商標とは、称呼、観念、外観とも類似していることが明らかであるから、本件商標を付した指定商品中、審決が認める「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」以外の商品についても、それらが取引に供される場合には、原告又は原告の関連会社の製造販売に係るものであるかのように取引者・需要者に認識され、その出所を混同するおそれがあると認めるのが相当である。

これによれば、審決が、「白鹿」の文字を書してなる本件商標を、本件指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」以外の指定商品について使用した場合には、商品の出所について混同を生ずるおそれがあると認めるに足る証拠がないから、その登録を無効とすることはできないと判断したことは、誤りであり、審決は、取消しを免れない。

2  よって、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成5年審判第12958号

審決

兵庫県西宮市鞍掛町6番20号

請求人 辰馬本家酒造 株式会社

東京都千代田区六番町7 下条ビル3階

代理人弁理士 網野誠

東京都千代田区六番町7-1 下條ビル3階 網野特許法律事務所

代理人弁理士 網野友康

大分県大分市弁天2丁目2番5号

被請求人 株式会社 草本商店

福岡県福岡市早良区曙2丁目1番16号 綾田ビル 綾田特許事務所

代理人弁理士 綾田正道

神奈川県川崎市幸区大宮町22番2号 ロイヤルシャトー川崎203号

代理人弁理士 平田義則

上記当事者間の登録第2057466号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

登録第2057466号商標の指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」についての登録を無効とする。

その余の指定商品についての審判請求は、成り立たない。

審判費用は、その3分の2を請求人の負担とし、3分の1を被請求人の負担とする。

理由

1. 本件登録第2057466号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙の(1)に示すとおりの構成よりなり、昭和60年10月24日に登録出願、第33類「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」を指定商品として、同63年6月24日に設定登録がなされ、現在、有効に存続しているものである。

2. 請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2103676号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙の(2)に示すとおりの構成よりなり、昭和46年7月20日に登録出願、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、同63年12月19日に設定登録がなされ、現在、有効に存続しているものである。

3. 請求人は、「本件商標の登録は無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)請求人は、「白鹿」の文字を縦書してなる商標を登録出願したところ(甲第2号証)、本件商標を引用した拒絶理由通知書を受けている(甲第3号証)。

したがって、請求人は、本件審判を請求するについて利害関係を有するものである。

(2)請求人会社の前身である辰馬本家は寛文2年(1662年)に創業されたのであるが、「白鹿」の商標はその創業と同時に採択され、特に天明寛政の頃、灘酒の江戸積みが盛んになるにつれて辰馬本家の醸造高も急増し、「白鹿」の商標も全国的に周知著名となり、文政、天保の頃には確固たる地位が築かれたものである(甲第4号証)。

すなわち、辰馬本家の生産高は、明治維新後にも高級清酒については全国第1位の地位を持続し、今日においてもトップランクに位置付けられる生産量を誇っており、その製品にはほとんど「白鹿」の文字よりなる商標ないしはこれを要部とする「黒松白鹿」等の商標を使用してきたものである。

したがって、「白鹿」の商標は、請求人の前身である辰馬本家ないしは請求人の製造販売にかかる商品清酒を表示するものとして全国的に周知著名な商標としての地位を、徳川時代より連綿として保持し続けて今日に到っているものである(甲第5号証)。

なお、「白鹿」の文字のみを縦書してなり、徳川時代より連綿として使用してきた態様そのままの商標は、明治18年12月8日に登録第916号商標として登録され、明治34年1月12日に続用登録がなされた(甲第6号証)。

さらに今日においては、登録第137821号商標(甲第7号証)、その他これと連合する引用商標等の要部として、登録商標としての地位を保持して今日に到っているのである。

すなわち、これらの各登録商標に表された「白鹿」の文字は330年以上もの長年に亙る継続使用により、また請求人の営業努力の結果、「白鹿ブランド」として極めて著名な商標として広く一般に知られるに至ったものである。

その証左として、引用商標について、防護標章登録が、第29類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料水、果実飲料、氷」、第30類「菓子、パン」及び第33類「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」の商品になされている(甲第11号証ないし同第14号証)ことは、引用商標は、少なくとも、食料品の分野のかなり広範囲において、請求人の業務にかかる商品を示すものとして著名であることが、特許庁において正式に認められたことを示すものである。

(3)そこで案ずるに、請求人の所有にかかる上述の各登録商標の要部が「白鹿」の文字であり全国的に周知著名な商標として一般に「ハクシカ」の称呼をもって取引に供されていること、及び本件商標が「白鹿」の文字を構成要素とし「ハクシカ」の称呼を生ずることから、これらが相類似する商標であることは言うを俟たないところである。

かかる事実が存在する以上、本件商標を付した商品が取引において流通する場合においては、取引者需要者は「白鹿」の文字より生ずるイメージがその脳裏に強く印象づけられていることよりして、本件商標の表示された商品を、同一の出所にかかるものであるか、関連会社の製造販売にかかるものであるかの如くその出所を混同するおそれがあり、結果的に請求人所有の登録商標に代表される「白鹿ブランド」のイメージが強く傷つけられる場合もあり得ることは取引の実際に照らし充分に想到され得るところである。

以上のとおり、請求人所有の「白鹿」商標は極めて著名な商標であるが、かかる極めて著名な商標は、必ずしも「清酒とかかわりの深い商品」について使用された場合に限らず、いかなる商品について使用された場合にも、広義における出所の混同を生じさせるおそれを否定することはできないものである。

いわんや、本件商標は、第33類「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」を指定商品とするものであり、これらの商品は清酒、焼酎等の酒類の原材料であることは一般人においても広く知られているところであって、これらの商品は酒類と極めてかかわりの深い商品であると言い得る。

したがって、本件商標は、食品を指定商品とするものであるから、本件商標をその指定商品に使用する場合においては、請求人自体が製造販売する商品であるかの如くに出所の混同のおそれが生じる可能性も極めて高いものであると言い得る。

(4)現在、請求人を中核として形成する「白鹿グループ」は文化事業(白鹿記念酒造博物館)、教育事業(甲陽学院中学校、甲陽学院高等学校、松秀幼椎園)、ホテル事業(甲子園都ホテル)、不動産事業(夙川土地株式会社)、レストラン事業(酒房「白鹿郷」等)、スポーツ事業(「香炉園テニスクラブ、「夙川ラケットクラブ」等)など多角的に事業を展開しており(甲第4号証、同第9号証及び同第10号証)、取引者、需要者が本件商標の付された商品に接した場合において、請求人若しくは関連会社が流通コスト削減のため原材料の取扱についても新たにその傘下事業の一環に加え、取り扱うこととしたものであるかの如くにその出所を混同するおそれがあることは想像に難くない。

よって、本件商標を本件指定商品中いずれの商品について使用した場合においても、出所の混同を生じるおそれがあるとするのが取引の経験則に照らし相当であるから、本件商標は、請求人及びその前身である辰馬本家が継続的に使用している著名な登録商標「白鹿」との関係において商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(5)つぎに本件商標の登録を得てこれを使用する行為は、上述のように全国的に著名な「白鹿」ブランドのイメージとその信用に只乗りして、取引者需要者を欺瞞し利得を挙げようとする行為であって、健全な流通市場の育成が妨げられることとなる。

よって、本件商標の使用は、商標を保護しようとする商標法の目的にも反し、公正な取引秩序を乱し法秩序を攪乱するものであるから、本件商標の登録は商標法第4条第1項第7号にも該当するものである。

(6)畢竟本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第7号に該当するものであるから、商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効とせらるべきものである。

4. 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。

請求人は、引用商標は本件商標の出願当時(商標法第4条第3項)すでに周知著名な商標であったと主張しているが、これは請求人の独断であって全く理由がない。

引用商標が、本件商標の出願当時、商品「清酒」に関して使用されていた事実は被請求人も認めるところである。しかしながら、請求人が提出した証拠では引用商標が本件商標の出願当時周知著名な商標であったという事実を認めることができない。すなわち、請求人が提出した甲各号証のうち、日本商標大事典以外は請求人が本件商標の登録後に発行した記念誌やパンフレット、あるいは商標登録原簿や商標公報等であって引用商標の使用状況を客観的に証明するものではない。また、日本商標大事典も、商標研究会という団体がその当時存在していた有名商標を集めて編集しただけのものであって、引用商標の周知度を客観的に証明するものではない。

仮に、引用商標が周知著名な商標であったとしても、これは商品「清酒」に関してである。そして、清酒業界は特殊な業界であり、清酒のブランドを他の商品のブランドとして使用する例はないし、また、仮にあったとしても一般的ではない。

また、企業の多角経営の可能性についても、近時ほとんどの企業がそれを行なっていることは否定しないが、清酒業界では関連会社の社名や商品名として清酒のブランド名を使用することは一般的ではない。このことは請求人の関連会社の中にも「白鹿」を付けた会社はないし、またその取り扱う商品やサービスについて「白鹿」ブランドを使用していないことからしても明らかである。

このように商品「清酒」に関するブランドを他の商品やサービスに使用することが一般的ではないから、本件商標をその指定商品に付して取引しても、取引者や需要者が本件商標を付した商品を請求人又はその関連会社が製造販売したものであると誤認混同することはない。

(2)本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。

請求人は、本件商標を指定商品に関して使用することは公序良俗に反するものである、と主張しているが、これは請求人のみが主張する独自の理論であって到底受入れられるものではない。

(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号はもちろんのこと、同法第4条第1項第7号にも違反して登録されたものではないから、本件審判請求は理由がないとの審決を求める。

5. そこで判断するに、請求人が提出した甲第4号証ないし同第11号証によれば、商標「白鹿」は、請求人の前身である辰馬本家ないしは請求人の製造販売にかかる商品「清酒」を表示するものとして、徳川時代より連綿として保持し続けて今日に到っていること、大正10年11月18日に指定商品「清酒」について登録第137821号として設定登録され、現在も有効に存続していること、昭和32年(白鹿アニメーション/琴編)からテレビ広告を行い、昭和46年(香山美子編)、同51年(小林桂樹編)、同52年(梓みちよ編)、同59年(マリーン編)、同60年(アンリ管野編)にテレビ広告を行い、その後もテレビ広告を行っていること等が認められる。

以上のことを総合勘案すれば、商標「白鹿」は、請求人が「清酒」について使用し、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願時に我が国において取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものと認めることができる。

また、甲第4号証(「辰馬本家酒造三百三十年記念誌」辰馬本家酒造株式会社 平成4年9月1日発行)、甲第9号証(「白鹿記念酒造博物館」パンフレット)及び「酒の事典」(株式会社東京堂出版 昭和59年4月30日 四版発行)によれば、米、麦、粟、とうもろこし、こうりゃん、きび等を清酒、焼酎等の酒類の原材料として使用されていることが認められるから、商品「清酒」と本件指定商品中に含まれる「米、麦、あわ、とうもろこし等の穀物」との関係は、製品と原材料という密接な関係にあるものといえる。

してみれば、被請求人が「白鹿」の文字を書してなる本件商標をその指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」について使用した場合、上記事情よりして、これに接する取引者、需要者は、恰も請求人若しくはその請求人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、その指定商品中の「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきである。

しかしながら、本件指定商品中「穀物、豆及び粉類(素材蛋白を除く。)」以外の指定商品については、前記法条を適用するに足る証拠を見出せないから、その登録を無効とすることはできない。

そして、請求人が提出した各甲号証によるも、被請求人が本件商標の登録を得て、これを使用する行為は、請求人が主張する「全国的に著名な『白鹿』ブランドのイメージとその信用に只乗りして、取引者、需要者を欺瞞し利得を挙げようとする行為」であるとは断定し難く、また、本件商標が直ちに公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものとも認めることはできないから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとの請求人の主張は採用しない。

よって、結論のとおり審決する。

平成10年6月8日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

別紙

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例